ライフシフト100年寿命の生き方

自分の寿命が100歳とすると、どう人生を生きる?

日本でもライフシフト100年時代の人生戦略という本がベストセラーとなった。

一般に教えられて当たり前だと信じていた人間の寿命に大きなパラダイム・シフトが起っている。

まず、次の寿命の変化のグラフが示すことは、年代とともに寿命は一直線に伸び続けており、それが頭打ちになる傾向が見えないことだ。

簡単に言うと、現在20歳の若者の平均寿命は100歳、つまり100年生きるのが当たり前になる。
一昔前に、きんさんぎんさんという双子の女性が100歳を越えて元気だと言うので、テレビでしきりに話題となったが、これがもう特別なことではなくなるということだ。

 
これからを生きる私たちは、長寿化の進行により、100年以上生きる時代、すなわち100年ライフを過ごすこととなる。新しい人生の節目と転機が出現し、「教育→仕事→引退」という人生から、「マルチステージ」の人生へと様変わりする。それに伴い、引退後の資金問題にとどまらず、スキル、健康、人間関係といった「見えない資産」をどう育んでいくかという問題に直面するというのが著者の見方だ。ロールモデルもほとんど存在しない中で、新しい生き方の実験が活発になることは間違いない。また、生涯を通じて「変身」を続ける覚悟が問われると言ってもよい。

 
今後は、金銭的な有形の資産と、家族や友人関係、知識、健康といった「見えない資産」とのバランスをとることがますます重要となる。

「見えない資産」は生産性資産、活力資産、変身資産の3つに大別される。これらに投資を続け、自らを再創造することが実り多い100年ライフには欠かせない。

以下、本の内容を抜粋しながら見えない資産について述べてみる。

見えない資産

 

生産性資産

生産性資産とは、生産性や所得、キャリアの見通しを向上させるのに役立つ資産を指す。わかりやすい例は、長年かけて培ってきたスキルや知識である。ただし、キャリアの初期に身につけた専門技能を頼りに、長い勤労人生を生き抜くことは難しい。そのため、生涯を通じて、複数の新しいスキルと専門技能を獲得し続けることが重要になる。

身につけておきたいスキルや知識は、情熱を注げることを前提としつつも、経済的な価値を生み出せて、しかも希少性があり模倣困難なものである。具体的には、「イノベーションを生む力、創造性」、「意思決定やチームのモチベーション向上といった、人間ならではのスキルと共感能力」、そして「思考の柔軟性や敏捷性といった、汎用スキル」を育むことである。

また、仲間の存在も生産性資産の一端を担う。高い信頼性を持つ職業上のネットワークは、互いの成長やイノベーションの促進に大いに役立つ。また、時としてコーチや支援者となってくれたり、必要な人脈を紹介したりしてくれる。こうした存在を、グラットンは「ポッセ」と呼ぶ。

評判も生産性向上に寄与してくれる。良い評判を得ていれば、高い能力があるのではないかと期待されやすく、守備範囲を広げやすい。ただ、評判の獲得には時間を費やさなければならない一方で、自ら評判を完全にコントロールすることは不可能に近い。今後は、ソーシャルメディアにより評判を左右する情報がますます拡散されやすくなるため、幅広い範囲で自分の評判を管理することが求められるだろう。
「 評判 は、 コミュニティ が その 人 に対していだく判断、 評価、 認識 の 枠内 で 形成 さ れる。 その 結果、 評判 は 重要 な 無形 の 資産 で ある と 同時に、 非常 に 複雑 な 性格 を もっ て いる。 それ は、 みずから の これ までの 行動 の 産物 で あり、 みずから の 生産性 に 大きな 影響 を 及ぼす もの で あり ながら、 自分 で 完全 に コントロール する こと は でき ない の だ。」

活力資産

活力資産とは、人に幸福感をもたらし、やる気をかき立てる資産を指す。具体的には、肉体的・精神的健康や、友人や家族との良好な関係などである。

まず、健康は長寿化時代において価値を増す一方だ。とりわけ、明晰で健康な脳を保つことは大きな意味を持つ。最近の研究によると、加齢により脳の機能が衰えるのを避けられないという常識が変わりつつあり、脳をくり返し使用すれば、機能を高めたりダメージからの回復を促したりすることもできるという。

また、ストレスを引き起こす要因をうまく管理することも大事だ。中でも、職場と家庭のバランスをとり、両者での前向きな感情が伝播し合う効果は見逃せない。

そのほか、活力資産の形成に役立つのは、長い年月をかけて築かれ、深く結びついた親しい友人たちとの関係である。これをグラットンは「自己再生のコミュニティ」と呼ぶ。友情を長続きさせ、深めている人は、高齢になってもエネルギッシュで前向きな傾向が見られる。

変身資産

Ridofranz/iStock/Thinkstock
変身資産とは、人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意思と能力のことである。移行につきものの不確実性への対処能力を促す要素ともいえる。具体的には、次の3つの要素が必要となる。

1つ目は、「自分について良く知っていること」である。自分の過去、現在、未来について内省し続けることで、変化を経験しながらもアイデンティティと自分らしさを保ちやすくなる。

2つ目は、「多様性に富んだ人的ネットワークを持っていること」だ。昔からのネットワークは同質性が高いため、変化を促すよりも、同質であることを後押しする傾向が強い。そのため、新しい視点を得て、変身を遂げていくには、大規模で多様性に富んだネットワークに接することが欠かせない。

そして3つ目は、「新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていること」である。変身の過程で既存の行動パターンが脅かされるときに、新しいやり方を実験し、受容する姿勢を持つのだ。すると、新しい生き方を探索し、適応することができるようになる。そこでは、型にはまった行動を打破する「ルーチン・バスティング」が必要となる。

このように、3つの「見えない資産」に投資を続け、自らを再創造(リクリエーション)することが、充実した100年ライフを送るためのカギとなるだろう。

 

 

 

タイトルとURLをコピーしました