トータルバランス

トータルバランスとは(PMの例)

トータルバランスというのは学術的に決められた言葉ではなく、読んで字のごとく包括的なバランス感覚のことを言っている。例えば、別のチャプターにて、プロジェクトマネジメントのシリーズをこのブログでは載せているが、プロジェクトマネジメント(PM)には、非常に多くのファクターがある。目標設定、組織構成、リソースの確保、スケジュール管理、コスト管理、コミュニケーションなどなど、多くの要素を同時にマネジメントしていかなければならない。

Businessman

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例えば、一年間のプロジェクトの実行をしている時に、今日何をしているかというと、上記のすべてのことを毎日同時にやっているわけではない。例えば今日は、スケジュール管理の仕事をしているとしよう。往々にして、初心者は、スケジュール管理に今日は集中していると、他のファクターは意識の外に置かれてしまう。スケジュール管理のみの観点から物事を考え、判断し、決断していく。

ところが、プロジェクトマネジメントの要素は、すべてが有機的に関連しており、スケジュールの変動は直ちに、コストに影響を与え、コストの変動があれば、ステークホルダーへの説明をどうするか、組織の人数をどうするかなどと、連鎖的にすべてに変化をもたらす。プロジェクトマネジメントでは、これらの多くのファクターのトータルバランスをとって、微妙な判断と決断をしながらゴールを目指すことだ。

経営者にとってのトータルバランス

経営者というのは、最終的に事業が長期存続、発展するように、会社という舟の舵をきっていくのであるけれど、これは太平洋のような障害物のあまりない大海原を行くというよりは、グランドキャニオンの岩があちらこちらに突き出ているような急流を下っていくのに似ている。この時に、前後左右の多くの障害物を同時に見ながら、バランスをとって、舵をきっていくことが必要になる。

一つの障害物の岩にのみ気を取られて、左右の岩が見えないでいると、あっという間にどこかの岩にぶつかって沈没してしまう。こういった状況にあって、経験のある経営者は、トータルバランスを考えながら、微妙な判断と決断を速やかにしていく。プロジェクトマネジメントの教科書では、長年の蓄積された知識が詰まっているので、ほとんどの関連する必要項目が網羅されているので、それをすべてチェックすればいいじゃないかとも思うけれど、現実のビジネスでは、教科書では予測できない事故や、状況(メンバーが突然病気になるとか、地震が起きるとか)がかなり頻繁に発生する。残念ながら教科書にはこれらについては書かれていない。

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従って、トータルバランスの中には、教科書上での多くのファクターに加えて、予測不可能な事態への対応能力も必要になってくる。中でも、経験に基づく「かん」みたいな能力が大切だ。こう言うと、なにか非論理的に聞こえるかもしれないが、世界のトップクラスのスポーツ選手などは、これらは当然の如く人間業とは思えないことを、直感的に、当たり前のごとくやっている。世の中で成功した経営者は、こういった予知能力的なものを長年の経験によって培っているのだ。

どうやってトータルバランス力をつけるか

それでは、船出したばかりの起業家は、どうすればいいのか? 正直なところ、別のチャプターで述べたように、起業した多くの会社が5年後にはほとんど消え去っているという事実はなかなか変えることができないと思う。失敗する背景には多くの原因がある。知識不足などは、誰にでもよくわかる原因の一つだ。しかし、終わった後でも一番わかりにくい失敗原因の一つが、このトータルバランスの欠如だと思う。

経営というのは毎日毎日多くの問題にさらされるが、これらをバランスをとって、解決していかないといけない。一つの問題はうまく解決したようにみえても、そのアクションがきっかけでまた別の問題を引き起こすとこはよくあることだ。連鎖反応が起こる。囲碁や将棋のプロの世界では、何手先まで読むかということが、勝敗を決めるけれども、経営も同じだ。次に打つ手が、5つの可能性があったとして、それぞれの手について、後々の影響と結果がどのようになるか、バランス感覚をもって見極める必要がある。

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勝率を上げる経営というのは、トータルバランスがいかに難しいことかをまず理解することから始める。自分が今決断しようとしている内容が本当にベストなのだろうか?そう自分に問いかけることで、将来の失敗の確率を減らすことができる。その態度というのは、自ずと経営者としての自分に対して、「周りの人の意見に耳を傾ける」ように仕向けるので、人のマネジメントという観点からもよい方向に向かう。

次に、日々の問題への遭遇の度に、意識的に「このアクションを取ると、他にどのような影響がでるだろうか?」と考える「癖」をつけることだ。これが、短絡的な思考と行動を抑制し、思慮深いリーダーシップの訓練となる。失敗した時に必ず、「何故失敗したのか」徹底的に分析し、自分の考えが至らなかったところを明確にし、次には同じ失敗を繰り返さないだけでなく、事前に問題を予見し、手を打てるように練習することだ。

個人生活でのトータルバランス

トータルバランスというのは、実は、会社やプロジェクトの運営だけの話ではない。個人的な人生の様々な出来事、子育て、家族関係、趣味のサークル活動など、ほとんどの分野で大切なことだ。バランスを欠いた言動は、周りの人に迷惑をかけることも多いので、人間関係が崩れやすい。人間は一人で生きていけないものなので、人間関係がうまくいくかどうかは、自分の幸福感に大きな影響を与える。

また、個人的なファイナンシャルな部分でも、長期的な視野に立った貯蓄や出費、保険の設定などをトータルで考えるべきだということで、ファイナンシャル・プランニングというビジネス分野も随分前から出来ている。

Financial Plan word speech bubble illustration on white background.

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以上の事をよく理解し、日々、トータルバランス力を磨くという生活をしていると、会社の仕事上だけでなく、個人の人間関係、その他自分の周りに起こる様々な事柄が、少しずつ改善していき、何年か後には大きな差となってくることだろう。ぜひ、このことを忘れないでほしい。

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